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第60話  

篠田初はもがいて松山昌平を押し返した。「松山昌平、あんた病気か?」

 人の楽しみを邪魔しないでくれないか?

 「子供は見ちゃダメよ!」

 松山昌平はまるで父親のように、篠田初のような若い娘が悪いことを学ぶのを心配するかのように言った。

 篠田初は呆れて言った。「私はもう子供じゃない。何度も大変な場面を経験してきたわよ!」

 「ほう、じゃあどんな大変な場面を経験したか、言ってみろ」

 冷たい顔の松山昌平は少しも怒りを見せず、むしろ面白そうに、篠田初をじっと見つめた。

 「......」

 篠田初の脳裏には、あの夜彼と一緒に過ごした情熱的な情景がよみがえり、頬が不意に赤く染まった。

 そのきまり悪そうな反応を見た松山昌平は、彼女が妊娠していないどころか、他の男性と関係を持ったこともないと確信し、内心喜んだ。

 その時、小林柔子もまた気まずそうに部屋から出てきて、慌てて言い訳を始めた。

 「初さん、何もなかったですよね?私もまさか伊達明史がこんなことをするなんて思いもしませんでした。さっき二人が閉じこもっていた間、彼が何かあなたに迷惑をかけたのではありませんか?」

 その言葉は明らかに篠田初を罠にはめようとするものであった。男と女が二人きりで部屋にいて、しかも男はあんなにも卑猥だった。何もなかったとは信じがたいというわけだった。

 篠田初は笑って言った。「もし何もなかったと言ったら、小林さんはがっかりするんじゃないの?」

 「だってさっき小林さんが渡してくれたあの一杯のお酒、なかなか効き目があったからね!」

 篠田初の言葉に、小林柔子の顔はさらに青ざめ、彼女は弱々しい様子で反論した。「初さん、その言い方はおかしいですよ。私はただあなたに申し訳なく思っていて、心からの謝罪の気持ちを込めて一杯のお酒を差し上げただけです......」

 「どうしてこんなことになったのか私にもわかりません。お酒は巧美ちゃんが持ってきたもので、何か入っていたかどうかは彼女に聞いてみてください」

 「本当に?こんな卑劣な手口、あの馬鹿な娘にしては上手すぎるけどね!」

 この女は、本当に巧妙に責任を擦りつけるものだった。数言で自分の身をきれいにしてしまった。

 篠田初は、思わず柳巧美に同情さえ覚えた。

 「初さん、あなたが私に不満を持っているのはわかります。でも
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